いつも顔を伏せがちで自分から動こうとしない子どもの探索活動を促す取組について
【はじめに】
家庭においては寝返りをして居間と台所のスペースなどを行き来し、お気に入りの空間やお気に入りのおもちゃに触れて遊ぶような能力がある子どもが、学校で床に顔を伏せて動こうとしないという実態を示していました。無理にかかわると自傷行為を示すことがありました。また、好きなものを見せながら移動を誘導するようなかかわりを教員は試みますが、多くはうまくいきません。
筆者は、日常生活でじっくり子どもの様子を観察しながら、やりとりの糸口を見つけ、事例児に探索活動(自分が居る空間の様子を自分で動きながら、確かめ、探り、自分自身の安定を図る活動)を促していきました。
まず、学校の活動拠点である教室が、本児にとってよくわかっている空間になるように、気に入っている玩具や、自分の持ち物(水筒、着替え、給食袋)がどこにあるのか、玩具を並べる台とかごを用いて、決まった場所(子どもが少しの寝返りで手が届く位置)に配置するようにしました。その結果、教室内では子どもが少しの寝返りで好きな玩具の所まで移動したり、教員にかかわりを求める様子が見られるようになりました。
次に、広い空間においては、車椅子や座位保持椅子での移動の際に、事例児の自発的な動きである視線を向ける行動や、転がしたボールの行方を見る行動に合わせたやりとりを試み探索活動を促しました。すると、行きたい方向に視線を向けたり、ボールを転がしたりしながら、周囲の様子を自分から確認しようとする行動へ発展していきました。
筆者は取り組みを通して、寝返りなど多少の移動はできてもよくわからない状況において顔を伏せてしまうようなタイプの子どもとのかかわりを広げていく視点を以下のように整理しました。
かかわりにおいては、まず教材や内容が先行するのではなくコミュニケーションが優先されるべきであり、いかにやりとりを展開していくのかを学校生活の中でかかわりのあり様を考察し、よくわかる生活空間の整備とかかわり方を子どもに合わせて調整していくことが重要な視点でした。
自由な移動が困難でかつ空間の様子が把握しにくい状況では、子どもの自発的な動きにかかわり手が注目することが必要で、その行動を基に探索活動へつなげていくことが大切な視点となることがわかりました。
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